二度とこんなところへは戻ってこないだろう。そう思っていた。
『背中を押して腕を引いて』
思い返してみる、ほんの数ヶ月前まで続けられていた二年と半年。そこには自分を嘲笑し疎外する理解できない人々がたくさんいて、毎日が軽い地獄で、でも幼い頃から何より好きだった野球があったから結局逃げることは出来ずにずっと居た。
暗くって気持ち悪い。体格小さくて変化球ばかり馬鹿みたいに投げてる。なんでお前こんなとこ居んの、邪魔なんだけど。殴ってもなんも無いよな、沖だもんな。あははそんなに野球好きなんだ道具大事なんだじゃあこうしてやるよあはははは。
笑いながらそんなことを言ってそんなことをやる彼らの方がよっぽど気持ち悪いと思った。もううんざりして、やっとそれが終わった時は心の底からほっとして、そして高校に上がったら絶対もうやめてやる、そう考えた。野球なんて要らないもう要らない、捨ててやる。
なのに、なんで僕はまたマウンドの前にいるの?
首をひねる。思い出されるのは悪戯に明るい同級生の笑顔とやたらやかましい声だった。そう、そうだ、引っ張り込まれたんだ僕は。もうあんな思いするもんか騙されるもんか、そう心に決めていたはずなのに。
散々渋って、グラウンドへ連れ込まれそうになった時なんか(異常なくらい)必死でその手を振り払おうとして、でも結局その笑顔と言葉と野球への未練に僕はここへ来てしまった。
「おーきー!!良いぞ、投げろ!」
楽しそうな声に顔を上げる。キャッチャーマスクの奥の丸い瞳がきらきら輝いて見えた。なんでそんな馬鹿みたいに純粋に楽しめるの、そう思ったけど答えが明白すぎて訊くのはやめた。そんなの決まってる、あいつは野球に愛されたことしかないんだから。僕と違って。二年と半年、拒否され疎まれ続けた僕と違って。
「おーい。何してんだー?早く投げろよー。」
ぶんぶんミットを振り回して叫ぶ由太郎に、分かったよと小さく答えて構えた。めんどくさい、少し思ったけどそれはこうして野球をすることがめんどくさくて思ったんじゃない。
「やっぱ沖の球はすげーなー!!」
「…そう……?……どうせ…魁さんには、敵わないし……」
「んなこと無ェ!にいちゃんの球と沖の球は全然違うだろ!?比べるなんて出来ねーよっ」
「……ふーん…」
「…あれ、沖、どこ行くんだ?」
「見れば分かるでしょ…。……壁当て…」
「はあ!?なんで…」
「由太郎…魁さんの球も捕らなくちゃ…いけないじゃないか……。…その間、僕、ヒマだし…」
「誰かに捕ってもらえばいいだろー!咲山先輩とかに頼めば絶対やってくれるって!」
「…やだ……。」
「だから、なんでって!」
「…、……もう…いい……。…放っといてよ…」
「あ、おい!お…」
まだ何か話したそうだった由太郎に背を向け、すたすたと校舎裏へ歩き出す。いつにも増して背中が重い気がした。ピーピーうるさい先輩のいう「ネガティブイオン」とやらが、ずっと大きくなっているんだろう。俯いて、手の中のグラブとボールをぎゅっと握る。
由太郎、お前のお蔭で僕はもう一度グラブを取れた。
由太郎、お前のお蔭で僕はもう一度このマウンドに立てた。
でもお前抜きでそれを実行できる自信なんか、僕には無いよ。
由太郎がいない時、僕は努めて一人になるようにした。魁さんも小饂飩先輩も緋慈華汰先輩も監督さえも、心から信頼する気なんて起こらなかった。そんなことを出来る相手が居るとすればそれは由太郎だけ。由太郎さえいれば僕は他のどんな目にも声にも耐えて野球をしていられる。それだけで良い、もう十分。そう思っていた。
「沖ー。結局ホントに壁当てやってたのかぁ?」
「…何……いいでしょ、別に…ちゃんと、練習ノルマは…こなしてるし……」
「んー。でもさぁ、やっぱ一人でやってるより誰かとやった方が楽しいじゃん」
「……それは…由太郎だから、だろ…、……僕は、よく知らない人なんかと一緒にやるぐらいなら、一人がいい…。」
「よく知らない?」
きょとんと目を丸くして着替える手を止め、訊き返す。そんな由太郎を、面倒臭そうにじろりと見やる。その沖の目線の冷たさにもやっぱり気付かないで、
「知らないってこたないだろー!?みんな、俺もうどん先輩もヒジカタさんもにいちゃんもみんなみんな、もうお前の仲間なんだぞ!」
「…うるさい…知らない、よ……知り合って少ししかないのは、本当だもん…」
「お前なあ、好い加減みんなとも仲良くしろよ。俺は別に良いけどよ、いつもいつも助けてやれるわけじゃねーぞ。それに試合になったらカバーしてくれんのは俺じゃなくてバックのみんななんだかんな!」
「……、分かったよ…うるさいったら……もっと小さい声でしゃべって…。」
とりあえず黙らせる為に了承の言葉を漏らす。もちろん本気で言っているわけではないが、由太郎は至って素直に信じたようだった。よーしそれじゃ明日から俺が居なくてもちゃんと練習するんだぞ。ばんばん沖の背中を叩きながら言う。相変わらずの大声に顔をしかめたけれど、他の人のそれと違って決して嫌いな騒がしさではなかった。
「…はあ……。僕、何してるんだろう…」
「あ?なんか言ったか、沖?」
「…別に……」
なんでもないよ。そう言おうとした時、ばたんと部室のドアが開いて一層騒がしい声が入ってきた。
「だからよーカイちゃん、女なら誰だってピーな…」
「そろそろ口を閉じよ、小饂飩…」
明らかに相手の反応の方を面白がっているふうな明るい声に、注意する気もすっかり萎えたらしい低い声。にいちゃん、うどん先輩。由太郎がぱっと顔を明るくして言った。沖は眉をひそめてさらに暗くなる。そしてただでさえ小さい体をまた縮めるものだから、小饂飩や魁もその様子に気付くことなく由太郎に笑って答えた。
「よーユタ坊。てめー今日も絶好調だったじゃねーか」
「おうっ、うどん先輩も歌舞伎打法かっこよかったぞ〜!」
二人してにこにこ笑い合いながら話す二人に少し笑みを漏らしたあと、きゅっとその表情を引き締めて弟に用を告げる。
「由太郎。親父殿が呼んでいる」
「ぅえっ、マジ!?なんだよ〜俺なんかやったっけ?」
「拙者も一緒に、とのことであったから、何か説教だとしても由太郎一人の責ではないと思うが…。ともあれ、急いで行った方がよかろう」
「分かった。じゃ、沖、悪ィけどちょっと待ってくれな〜」
「え?」
「小饂飩、遅くなるかもしれんから、先に着替えていてくれ」
「おー、了解。拳骨喰らわねーように気をつけろよ〜二人とも」
「あはは、そりゃ俺らじゃどーにも出来ねーや。オヤジの機嫌次第」
「ちょ、待っ、由……」
「すぐ戻っからよ!うどん先輩と一緒なら退屈しねェだろ?待っててなー!」
いつもの無邪気な笑顔、にかっと笑って、ぶんぶん手を振って返事も待たずに行ってしまう。魁もその背中を追うようにして出て行き、ばたんとドアの閉まる音がしてその場に静寂が降りた。
「……。」
縋るように伸ばしかけた手は結局何もつかめずに空をかき、ゆっくりと体の脇に下がる。しぃぃぃん。沈黙が、いつもは好きなはずの沈黙が耳に痛かった。まあすぐにそれは破られたけれど。
「アッハッハ、ユタ坊はいっつもせわしねーなー。しっかし、沖ってあんまり賑やかなの好きじゃなさそーなのに、案外仲いいよなあいつと。やっぱ正反対の奴とは相性良いんかな?」
「……知りません、よ…」
賑やかな声は由太郎のそれとは違って酷く耳に障る。やめて騒がないで喋らないで僕に関わらないで。いっそ今すぐ逃げ出そうかとも思ったが、由太郎はどうやら自分と一緒に帰る気でいるらしかったしその由太郎が自分に向けて言った言葉(「待っててな!」)を小饂飩は一緒に聴いていたはずだからここで帰れば不審に思われそうで出来なかった。仕方なく、置かれていた長椅子の端っこに腰を下ろし、膝を折って抱えて顔をうずめる。すっかり着替え終わってしまっていたから、着替えに集中しているフリも出来ない。出来るだけ俯いて、さすがにあからさますぎると思い耳は塞がなかったが口をきゅっと閉じた。どうかどうか、このまま一人でずっと喋り続けるか諦めて黙るかしてくれますように。
だがそんな沖の願いも空しく、しばらくはぺらぺらと何かしら喋っていた小饂飩は不意にふつりと黙り、そしてひょいと距離を詰めて沖の顔を覗き込んできた。ひっ・と息を呑んで少し後ろに引く。小饂飩はただ怪訝そうな面持ちで、
「んだあ、沖。ずっと俯いたまんまでよぅ、どっか具合でも悪ィのか?」
「べ、別に…なんでも……あの、大丈夫です…から…」
「大丈夫って、ホントのホントだろーな。大体テメーいっつも顔色悪いんだよ、大方ちゃんとしたメシも食わねーで毎日ネガティブイオンばっか吐き出してんだろ、たまにはこう、もーちょっと明るくよ…」
流暢に話しながら、椅子に座り込んだ沖の肩に何気なくぽんと手を置く。それは本当に何気ないことだったけれど、唐突だったのとその手が予想以上に温かくそして強かったのとで瞬間的に沖はパニックに陥った。
蘇るのは、好きなものに拒否され続けた二年と半年。白い目、自分を傷つける為に伸ばされてくる大きな手。
「……っ、や、だ…!!」
ばしん。思っていたより大きな音がして、手もじんじんと痛んだ。息を切らして恐る恐る見つめる、向けられていたのは吃驚して丸くなったゴーグルの奥の赤い瞳。やめてよもうこっち見ないでもう関わらないでもう、どうせ。
「…沖?何……」
「近寄らないで下さい触らないで下さいもう僕はだめだから」
「だめって、…何がだよ?おかしーぞお前」
「由太郎は笑って言うけど、あんなのあいつしか言えない恵まれたあなたたちのような人しか、言えない、僕には」
そう今更だけどやっぱり無理なんだ僕には。
「…僕は、誰も信じる気なんか、由太郎があんまり鬱陶しくないのだって自分でも驚くぐらいで本当はこんなところへ来る気もなくて」
「…沖……」
言いながら自分の思考がぐるぐると混乱してきているのは自覚していた。そこに少しだけ歯止めをかけるような、間を含んだ声。
「…お前、怖がってんのか?」
びくりと震えて、口をつぐんで見上げる。少し眉間に皺を寄せながらもじっとこちらを見つめる目がそこにあった。その中の光が真鬱すぎてまた耳も目も塞いで逃げ出したい衝動に駆られる。
「なあ、お前、なんか怖がってんだろ。びくびくしてさ、いつもはありえねーくらいふてぶてしそうな顔してネガティブイオン出してるくせに。なんだよ、ここ、俺しかいねーだろ。何が怖いってんだ?」
違う、と思った。違う、あなたしかいないからこそ怖いんだよ僕は。あなたしかいないから、…ここに由太郎がいないから。
「おい、なんとか言えって――」
黙りこんだ沖をますます怪訝に思ったのか、呼びかけて再び手を伸ばした。肩に触れる直前、瞬時に反応した沖の手でまた払われる。ばしん。二度目、響いた音に目を丸くして、そして小饂飩はゆっくり口を開いた。
「…お前……俺が、怖いのか」
「……。」
沈黙は肯定の証と受けられたらしい。まあその通りだったけれど。小饂飩の顔が、きゅっと歪む。
「…なんでだよ?俺、なんかしたか?」
「……別に…何、も」
「じゃーなんで怖がんだよ」
「…怖い、ってわけじゃ、ない…です……ただ、ただ、…信用しないだけ」
そうそれだけ、入部した時からここに居る人々は昔のあの人々とは違うということぐらいわかっていたんだ、でも信用は出来なかった。ただそれだけ。
「…信用しねえ、って…俺ら仲間だろーが!歳は違うけど、おんなじ黒撰のチームだぞ!」
「…、…仲間……?」
嘘ばっかり。どうせ、どうせ。
「俺は、沖だって、ちゃんと仲間だって思って信じてる。お前は――…」
「…嘘、……」
「あ?」
「嘘…だ……どうせ」
きゅ・と袴の膝を握り締める。だんだん震えてきているのは、やはり自覚のうちで。
「…どうせ、みんなみんなうらぎるくせに」
ぴた。小饂飩の動きも表情も固まって、ああ意味が掴めてないんだな・とぼんやり思った。
「……みんな…そうだよ……最初は、笑って、簡単にそういうこと言うくせに…、……そのうち目の色変わるんだ」
(そうして僕の大切なものを奪って僕自体も否定し始める)
「いつか。…いつになるか、分からないけど……いつか…絶対。みんな、僕が目障りでたまらなくなるんだ。お前なんかいなくていいって、思うんだ。…信用、なんて……そんなの、僕は、信じられません、あなたの『信じてる』なんて信じられない、あなただってどうせどうせ」
「――…沖!」
止まらなくなっていた言葉を強制終了させたのは怒鳴り声に近い大きな声と胸倉を掴んだ強い腕。ああほらやっぱり、そうじゃないかそうじゃないかあなたもそうなるんでしょ分かってましたよだから僕は傷つかない、安心して、僕は最初からあなたなんか信じちゃいなかっただから恨みはしない安心してそして思う存分言えばいいですすればいいです、ぼくはあなたをうらみません。
そこまで考えたけれど、胸の襟元を掴み上げ自分と目線を合わせた時、真っ直ぐこちらを見てくる優しくないけど冷たくもないその瞳に、戸惑った。なんだろうこの目は、こんな目、見たこと無い。
「…沖……、…この、」
なに?
「馬ァ鹿!!」
…はい?
クエスチョンマークを頭いっぱいに浮かべる沖に対し、決して罵倒するわけではなくあくまで真剣に再び馬鹿・と怒鳴った。
「何考えてんだこの野郎、誰が目障りでたまんなくなるって?誰がいなくていいって!?信じてるっつってんじゃねーか、んなこと思うわけねェだろ、馬鹿!!」
「…や……声、大き…小饂飩先ぱ…」
「あのなあ、俺らは今年で最後なんだぞ。甲子園、夢を追える、最後の年なんだ。そんな年、最後に入ってきた後輩、一番大事な年のチームの仲間。おまけにお前は、カイちゃんしか有力なのがいないウチのチームがずっと探してた、二枚看板になれるぐれぇのピッチャーときた。…そんな後輩がよ、可愛くないわけがねェだろ!」
怒鳴り、頭突きするようにごつんと強く、額と額をぶつける。痛かったが、気にならなかった。今はそれより、目の前で本気で話し続けているその人の表情と言葉が。
「なあ、俺はお前もユタも他の一年もみんなみんな大事だよ。信頼してんよ。みんな同じだ、カイちゃんやユタ、村中監督が運んできてくれた夢に引っ張られて、バカみてーにそれ追っかけてる。…なのに、お前はどーしても俺らのこと信じてくんねーのか?なあ、俺らって、そんなに冷たい、赤の他人みてーに見えんのかよ?……ユタと俺らと、何が違うってんだ!!」
「……、…由太郎…は……」
なにがちがう?若干凍っていた頭が再びぐるぐるし始める。由太郎と、小饂飩と。由太郎はどうして信じられるのだろうあいつは僕に何をしてくれただろう。
「…由太郎は、…僕の球を誉めてくれて……野球部に、来いって言ってくれて…腕、引っ張ってくれて……」
ああちがう、そうじゃないそんなことじゃない、彼はただ。
「――…」
考えたら急に視界が潤んで歪んだ。今更初めて悟ったその答えが単純すぎて、ぽろぽろこぼれた。小饂飩はそんな沖の心情など分かるはずもなくて、唐突な涙にただ慌て始める。
「え、ちょ、泣くこた無ェだろ沖っ」
「…あいつ…は……由太郎、は」
それは決して特別なことではなかった。ただ、とても大きなことだった、沖にとって。この世でただ一人たった一人、彼だけは信じてもいい、信じてみたい。そう思わせるほど。ああ、彼はただ。
「…由太郎は、僕の球を捕ってくれたんだ」
沖の球が捕りたい、壁当てを見、話し始めて五分で由太郎はそう言った。楽しそうに当たり前みたいにそう言って、そして本当に捕ってくれた。その瞬間から由太郎は、沖にとって特別になった。
投手である沖には、壁以外・人間に球を捕ってもらえてこそ本当に野球の中に居られて、そしてそれを現実にさせてくれた由太郎はつまり沖に野球そのものを与えたも同然だったのだ。一度奪われた野球、それを取り戻してくれた。捕ってくれた、それだけだけどそれこそが。
「由太郎が、捕ってくれたから、僕はまた野球に受け入れてもらえた気がした、戻ることが出来た、だからだから」
「沖…」
襟を掴む手が緩む。その顔にさっきまでのような怒りは無い。
「ごめんなさい先輩どうしたら信じるなんてこと出来るのか僕には分からないんですどんなに先輩やみんなが笑っても話しかけても僕はどうすればいいか分からないんだ、好い人かもしれないなんて思ってもすぐに『だけどいつかは』とか思っちゃってどうしても、」
「ストップ」
半分涙声で喋り続けていた沖を低い冷静な(でもあたたかい)声と大きな掌が止める。ぱち、と瞬きをして一粒滴を落とし、見上げてきたその目、それをじっと見返して。
「分ぁった。分ぁーったよ。…ユタは、ほんとに特別だったんだな」
少し浮きかけていた沖の体をすとん・と椅子に下ろし、空いた右手でぽんぽんと頭を撫でる。少しだけ寂しそうに、だがいつもの彼の笑顔でにっと笑った。
「ちくしょー、ユタは得だな、あの野郎。あいつの明るさと人懐っこさは知ってっし、ある種の才能だとは思ってたけどよ。それプラスキャッチャーだってだけで、こんなにお前に信じてもらえんだからな。女房役ってホントだよな、キャッチャーいなきゃどんなピッチャーだって意味ねーんだもん、キャッチャーいるからピッチャーがいられるんだもん」
「……」
「しょーがねェや。昔お前に何があったかなんて知らねーし、無理に聞くのもどうかって感じだし。…お前がどうしても無理ってんなら、もういいよ。そのままで」
「…せん…ぱ……」
「でも、やっぱ寂しいからな。だから、言うだけ、言わせてくれな。そいで、出来たらいつか、信じてくれ」
「……何、を」
「…お前がどう思ってても、俺はお前のこと信頼してる。ユタたちと同じ、可愛い可愛い後輩だ。たとえ何があっても、いつかお前の言うように他の誰かの態度が変わったとしても、絶対に俺だけはお前のこと信じてやるよ。認めていてやるよ。なあ覚えててくれ、俺はお前をうらぎらない」
「……。」
じっと見つめる。見下ろしてくる瞳は相変わらず鋭いけれどどこか優しい。
しんじてくれ?しんじてもいいの?
ああ馬鹿みたい、こんな一昔前の熱血漫画みたいな説得でもうほだされかけてる、僕、馬鹿みたい。
でもひっこみかけていたなみだがまたじわりとにじんできているのはたぶんほんとうで
そうやって今まで何度後悔したか分かってるのか、お前
ああでも、でも――
「…先輩」
控えめに呼ぶと、すでに元の調子で明るく話し始めていた小饂飩がぴたりとそれをやめて、不思議そうにこちらを見る。そのなんでもなさに一瞬気圧されかけたが、ぐっとこらえてその目を見た。
「……ありがとう、ございます」
――でもぼくはずっと、みんなをしんじてみたかった。
少し降りた静寂。
「……おうよ!当ッ然!!」
一拍置いて、それから顔いっぱいに笑った小饂飩の(本当に本当に)嬉しそうなその顔を、恐らく当分は忘れられないだろう。
------------End.
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小沖じゃないです。あくまで+です。+のつもり。まあどっちでも良いけど(ぉぃ)
由太郎と沖の出会いは原作でも(一コマだけど)あったし、ネットの同人作品でも結構ある(気がする)ので、じゃあそうやって由太郎に誘われて野球部入ったあとの沖ってどうやって他の人々に馴染んでったんだろう・という感じで書き始めました。
書きたかったのは、えー「由太郎以外の“信頼”なんか信じられない」「信じないから恨まない」「そんな後輩が可愛くないわけがない」辺りです。他は、書いてる内に浮かんできた。特に由太郎との会話は出るわ出るわ…なんでこんな書きやすいのこの二人(ぇ)
要するに、まだ人が怖い沖と絶対に沖を傷つけない小饂飩というのが書きたかったのです。小饂飩はたとえ昔何があったとしてもそんな風に疑われてると知ったら絶対真っ直ぐ怒って悲しむと思う。由太郎以外はまだ信じない・という沖に、お前も大事だよちゃんとした可愛い後輩だよだから絶対傷つけたりなんかしないよ・って言って欲しかった。魁さんは寡黙で物静かすぎて大事な説得も一行か二行で終わりそうだったのでやめました。あの、十二支戦九回裏みたいに熱く説教かます雰囲気がよかったんだよ!緋慈華汰さんは回りくどすぎるのでだめです(真面目に書こうと思えば書けるだろ)
あ゛〜〜小饂飩と沖が好きだ〜!
いつか沖の過去話もちゃんと書いてみたいけど能天気すぎる私の頭ではイジメっつーもんがリアルに書けそうもないので誰かに頼りたいです。誰か書いて。(オイコラ)
※追記:どうでもいいんですが忘れてました。「咲山先輩」→「山咲」→「山崎」です。そういえば黒撰って由太郎以外キャッチャーいないなーと思って、でも話の都合上どうしてもほしかったので勝手に作りました(汗) すいません私新選組好きですけどファンってほどでもないのでホントにメジャーな人しか知らないんですよ…。。知ってる人、ほとんどレギュラーに使われちゃってたし;; 山崎はどうして出なかったんだろうなあ。有名だと思ってたのは銀魂好きな私の偏見なのかなあ(多分)